私の会計史 theme13 最後の経理部勤務(その2)

収益費用中心から資産負債中心へ

  藤田敬司

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会計ビッグバン

1990年代後半から日本で始まった企業会計改革は,英国証券取引所の新自由主義改革:"ビッグバン"に因んで,"会計ビッグバン"と呼ばれた。既存会計基準の見直しから始まり,いままで税法基準に頼っていた分野については新会計基準の設定へと進んだ。その進行方向は,すでに述べたように"取得原価による収益費用中心会計から時価による資産負債中心会計へ"であり,方法論は"形式基準から経済実態重視へ"であった。共通の狙いは,"オフバランスになっている資産負債のオンバランス"であり,米国基準への限りなき接近が目標であった。これは米国基準で連結財務諸表を作成・開示している企業にとって悪くない,個別財務諸表を連結するために米国基準へ組み替える手間を省くためにはむしろ歓迎すべき方向性であるが,90年代の米国FASBは改訂された資産負債概念(SFAC5~6号)に沿って,次から次へと会計基準を改訂し,とくに退職給付会計基準や金融商品会計基準は目まぐるしく変わった。審議会での議論に参加するためにも,また改訂・新設基準が及ぼす実務負担や業績インパクトを予測するには多くの関係者の協力を必要とした。

勤務中に新設...