世界のIFRS適用事例 Case8 超インフレ経済下における財務報告

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今回は,機能通貨が超インフレ経済国の通貨である場合の開示について取り上げます。日本では「デフレ脱却」がよく話題になりますが,世界には,激しいインフレに苦しめられている国もあります。超インフレ経済下では貨幣の購買力が急速に失われるため,異なる時点で発生した取引その他の事象から生じた金額の比較が,たとえ同一の会計期間内であっても誤解を招く可能性があり,経営成績及び財政状態を修正再表示せずに現地通貨で報告することは有用ではありません。

そこで,機能通貨が超インフレ経済国の通貨である企業の財務諸表は,期末日現在の測定単位で表示しなければならず,正味貨幣持高に係る利得又は損失は,純損益に算入し,区分して開示しなければならないとされています(IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」第8項,第9項)。

3年間の累積インフレ率が100%に近いか

どのような状況をもって,「超インフレ経済下(hyperinflationary economies)」とするのかについては,超インフレの指標の一例として,次のものが挙げられています(第3項)。

(a)一般市民が,財産を非貨幣性資産又は比較的安定した外国通貨で...