Special Interview 中村直人弁護士に聞く 株主総会の実質化の傾向と今年の株主総会について

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 弁護士 中村 直人

◆近時の株主総会の傾向について教えて下さい。

株主総会は実質化の傾向にあります。これまで株主総会は儀式的,形式的なものでしたが,会議の目的事項について議論する場に変わってきています。これは,コーポレートガバナンス・コードが施行されたことによるものです。

以前は招集通知には法令で定められた事項を記載しているだけでしたが,株主に会社のことを理解してもらうために招集通知に任意にさまざまなことを記載するようになりました。総会の運営も,以前は会社の事情で決めていたものについても,株主がどのような総会を期待しているかという視点で決めるようになりました。報告事項として何を報告すべきか,決議事項について審議してもらうために何を説明すべきかを考えるようになっています。

機関投資家による議決権行使行動が活発になり,会社提案への反対が増えると,会社はこれに反論しなければなりません。例年どおりのシナリオに沿った報告をし,儀式張った答弁をしているだけでは,株主を納得させることはできません。会社は,株主総会で株主との対話を行うようになっています。

◆株主総会では何を目指すことになりますか。

株主満足度を向上させることです。株主満足度を向上させるといっても,お土産を配るということではありません。株主は会社の情報を知りたいと思っているわけですから,それに正面から応えるということです。

例えば,開催曜日を週末にする,開催時間を午後にするなど株主が出席しやすいような工夫も考えられます。招集通知に目次を付ける,カラーにする,図表を使用するなど読みやすくする,コーポレート・ガバナンス体制や経営方針,中期事業計画など,株主が関心のある事項から記載するなども考えられます。また,株主総会の受付で株主総会の式次第を配布して出席株主にわかりやすくする,会場で質問できなかった株主のために,株主総会後に質問を受け付けて,ホームページでその回答を公表するなども考えられます。

◆今年の株主総会に関連した制度の改正状況はいかがですか。

株主総会に関連した制度の改正状況については,第1に,証券取引所規則が改正され,今年1月以降に提出するコーポレート・ガバナンスに関する報告書において相談役・顧問等に関する開示を行うこととされています。

第2に,今年2月に会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案が公表されています。

第3に...