ハーフタイム 所有権の過去・現在・未来

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所有権の起源については,ジョン・ロック『市民政府論』(または『統治二論』後篇)の労働による私有化説が有力である。その説では,元々自然は万人の共有するところであり所有権と言う概念すらなかったが,個人が自分の労働によって自然から採取したものは彼個人の所有物と認められるようになった。いまでも英国の共有地(common)でみられる限定された便益享受権にその痕跡がみられる。やがて農耕社会が定着し人口が増えると,人が開墾し改良し耕作する土地については,生産向上のためにも所有権が法的にも保護されるようになった。このように形成された所有権は,ルソーによると人間不平等の原因となるが,永らく西欧文明の基盤として機能してきた。

現代産業社会では,知的財産権についても所有権の法的保護が進み,いまや米中関係がギクシャクする原因の一つになっていることは周知のとおり。このような生産財に係る所有権は,排他的な使用価値もあり,交換価値もあり,資金調達のための担保ともなる。個人にあっては,土地・家屋の相続権は世代間を取り結ぶ絆である。

ところが少子高齢化が進むわが国では,所有者不明の土地はいまや九州の面積(約410万ヘクター...