<INTERVIEW>わが社のIFRS15号対応 日本の収益認識基準の適用に向けたヒントをきく 第1回 富士通株式会社

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富士通株式会社 財務経理本部 経理部 財務企画部 マネージャー 坂口 和宏

<編集部より>

「収益認識に関する会計基準」が2021年4月1日以後開始事業年度より適用される。同基準は2018年1月1日以後開始事業年度より適用された国際会計基準(IFRS)第15号「顧客との契約から生じる収益」をベースとしているため,IFRS任意適用企業によるIFRS15号対応は,日本基準の企業にとって収益認識会計基準対応の先行事例として,参考になる点が多いことだろう。本誌はこのほど,富士通株式会社の坂口和宏氏にIFRS15号対応について,どのように準備を進めたのか話をきいた。

1.最初の取組み―適用3年前―

―IFRS15号対応はどのように始めましたか。

坂口氏  IFRS15号の最終基準は2014年5月に公表され,その直後から基準の研究はしていましたが,本格的に検討を始めたのは適用日の3年前くらいからです。当時感じたのは,従来のIFRSの収益の基準は,IAS18号「収益」,IAS11号「工事契約」などがありましたが,非常にコンパクトな基準だったこれらと比べると,IFRS15号はボリュームも増え,より概念的なものに整理されたということです。基準に書いてある言葉が難しくなりましたので,まずは本社の経理部門,私を中心としたチームで内容を咀嚼するところから始めました。

例えば「履行義務」という言葉も,会計に携わっていれば何となく理解できるのかもしれませんが,収益の基準というのは社内の経営陣をはじめ,現場にも理解してもらうことが必要ですので,「履行義務というのは顧客との契約のなかで約束した事項です」といったように,経理部門で基準をある程度平易な言葉に置き換えて説明をすることが重要でした。ただ,咀嚼も行き過ぎてしまうと,後になってから基準が求めるものと異なる処理をしてしまうというおそれがありますので,我々の理解・説明で問題がないかどうか,あらかじめ監査法人に確認をとりました。しかし,この時点ではまだ現場には展開せず,会社のビジネスの観点からどの論点が影響しそうか,本社の経理で洗い出しを続けていました。

―どのような論点があったのでしょうか。

坂口氏 当社の場合,ソフトウェアとハードウェアをそれぞれ単品で売るというよりは,主にセットで,そこに運用保守を付けた上で,1つのソリューションという形で顧客に提供することが多...