事例から学ぶ適時開示 第4回(最終回) 決算短信等及びその他の情報に係る不適正な開示の事例・留意事項

‐不適正な開示事例の解説‐

株式会社東京証券取引所 上場部 開示業務室 ディスクロージャー企画グループ 調査役 斎藤 裕哉

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1.はじめに

第2回及び第3回では,株式会社東京証券取引所(以下「東証」という。)が求める適時開示のうち,決定事実及び発生事実に係る不適正な開示の具体的な事例を紹介した。最終回となる第4回では,決算短信及び四半期決算短信(以下「決算短信等」という。)並びにその他の情報について,不適正な開示の事例を紹介する。また,TDnet による公表時刻よりも前に上場会社の自社ウェブサイト等で適時開示情報を閲覧可能な状態にしてしまう事案が発生しており,これも有価証券上場規程(以下「上場規程」という。)違反の一類型として説明する。

最後に,不適正な開示の削減・未然防止に向けた東証の各種取組みについて紹介する。

なお,本稿において意見にわたる部分は筆者の個人的見解であり,所属企業の見解ではないことをあらかじめお断りする。

2.決算短信等の不適正な開示の事例

決算短信等における不適正な開示については,決算の内容が定まったのに開示を失念していた又は開示ができなかったという「開示漏れ・遅延」は近年では生じていない②。一方で,例えば上場会社又はその子会社において会計監査人からの指摘により会計処理の誤りが発見された場合や,役...