Q&Aコーナー 気になる論点(224) 負債と資本の区分(5)

‐NCIプットの会計処理‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が2018年6月に公表したディスカッション・ペーパー(DP)「資本の特徴を有する金融商品」(FICE DP)では,非支配株主による子会社株式を対象とした売建プットオプション(NCIプット)は,親会社の連結財務諸表上,資本とすることを提案しているのでしょうか。

FICE DPでは,行使価格の現在価値を金融負債とし,発行時における子会社株式の公正価値で,NCIの認識を中止し,受取プレミアムとの差額を資本に認識することを提案しています。

<解説>

自社株プットの会計処理(1)‐論点

自社株デリバティブのうち,自社の株式を対象とした売建プットオプション(自社株プット)は,行使時における自社の株式の時価がいくらかによって,その結果が異なります。これを簡単な設例で確認しましょう。

[設例]
自社の株式の時価が100であるとき,行使価格90(固定数の自社の株式を現金90での買戻しが可能)の自社株プットを発行し,20のプレミアムを受け取ったものとする。

行使時の時価自社株プットの行使発行者のキャッシュフローの合計90超しない自社株プットは失効し,通算して20のキャッシュ・インフロー...