収益認識基準に対応した法人税基本通達のポイント 第3回 収益計上額に関する新たな取扱い

和田倉門法律事務所 弁護士・税理士 石井 亮

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1.法人税基本通達の構造

法人税基本通達の「資産の販売等に係る収益計上に関する通則」には,収益の計上単位に関する定めだけではなく,収益の計上額に関する定めが置かれました。その構造は,図表1のとおりです。収益認識基準に対応するための新たな取扱いと,従来の取扱いが混在しています。

【図表1 法人税基本通達の構造(収益の計上額関係)】

位置付け 通達番号 旧通達番号 内容 対象
通則 2-1-1の10本文 新設 資産の引渡しの時の価額等の通則 限定なし
同なお書 2-1-4,2-1-7
2-1-1の11 新設 変動対価 収益認識基準取引
具体的
取扱い
2-1-1の12 2-5-1 売上割戻しの計上時期 限定なし
2-1-1の13 2-5-2 一定期間支払わない売上割戻しの計上時期 限定なし
2-1-1の14 2-5-3 実質的に利益を享受することの意義 限定なし
2-1-1の15 2-1-8 値増金の益金算入の時期 限定なし
2-1-1の16 新設 相手方に支払われる対価 収益認識基準取引
※収益認識基準取引とは収益認識基準の適用対象となる取引をいう。

2.収益の計上額の通則

(1)時価計上の原則

新設された法人税法22条の2第4項は,資産の販売等に係る収益の額は別段の定めが...