<INTERVIEW>わが社のIFRS15号対応 日本の収益認識基準の適用に向けたヒントをきく 第5回 株式会社クボタ

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株式会社クボタ 財務部主計グループ 西村 崇
株式会社クボタ 財務部主計グループ 美濃島 広人

<編集部より>

国際会計基準(IFRS)第15号「顧客との契約から生じる収益」が,2018年1月1日以後開始事業年度より適用されている。日本基準である「収益認識に関する会計基準」(2022年3月期から原則適用)は,IFRS15号をベースに作成されているため,IFRS任意適用会社の取組みは「先行事例」として,日本基準適用会社の参考となる部分も多いと思われる。

INTERVIEW連載第5回となる今回は,2018年12月期第1四半期より米国会計基準からIFRSに移行した,株式会社クボタ財務部主計グループの方々にお話を伺った(第1~4回は, No.3366(富士通)No.3369(中外製薬)No.3377(NTTドコモ)No.3385(飯田グループホールディングス) にそれぞれ掲載)。

1. 米国会計基準からIFRSへ移行した経緯

―米国会計基準適用からIFRS任意適用に踏み切った理由と,IFRS15号の適用準備として,いつ頃,何に取り組まれたか教えて下さい。また,IFRS15号の強制適用時期と御社のIFRS任意適用時期はちょうど重なっておりますが,その辺りのタイミングは意識されたのでしょうか。

美濃島  IFRS任意適用の時期と,IFRS15号の強制適用の時期については,意識してあわせたわけではありません。たまたま重なりました。

IFRS任意適用のきっかけとしては,①IFRS適用企業の増加,②米国会計基準の適用を継続する意味が低下(2013年にSEC登録廃止),③グローバル経営管理基盤構築の一環,などが挙げられます。

このうち②について,当社は,1976年から米国会計基準を適用していました。当時は当社が海外事業を拡大していこうという時期であり,日本基準では海外での資金調達も難しかった時代ですので,米国会計基準を適用したそうです。また,邦銀の海外展開も後押しになりました。

ですが,2001年に起こったエンロンによる不正会計事件が,米国会計基準を変更する転機になりました。それまでは,米国会計基準というのは,世界最高品質と言われていたわけです。しかし,エンロン事件以降はその品質に疑問が持たれ始め,米国会計基準を継続して適用していく意義が薄れました。また,米国会計基準の有価証券の評価が損益計算に跳ね返って...