新春特別寄稿 上場制度を巡る2018年の回顧と2019年の展望

東京証券取引所 上場部長 林 謙太郎

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1.はじめに

2018年は,株式会社日本取引所グループの前身である東京株式取引所及び大阪株式取引所が1878年(明治11年)に開設されてから140年目の節目の年であった。

株式市場は,資金の出し手である投資者と資金の取り手である上場会社の双方が存在して初めて成立する。多様な投資者における上場有価証券への投資を通じた資産運用・資産形成ニーズと,上場会社における有価証券の発行を通じた長期安定資金の調達ニーズとを適切かつ効率的に結びつけることが,140年前も今も変わらぬ株式市場の役割であり,それに貢献していくことが上場制度に求められている。

株式会社東京証券取引所(以下,「東証」という。)では,この役割を十分に発揮するため,利便性,効率性及び透明性の高い市場基盤構築に努めているところである。

本稿では,2018年に実施した東証の上場制度上の取組みを振り返るとともに,今後の展望についても可能な範囲で言及していくこととしたい。

2.上場会社の動向

(1)IPOの動向

2018年中のIPO(新規株式公開)の実施件数は,全国証券取引所の合計で98社となり,前年比で2社の増加となった(図表1)。

図表1 国内IPO件...