Q&Aコーナー 気になる論点(242) 株式報酬の会計処理(1)

解説

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

‐総額計上か純額計上か‐
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 2019年5月28日付の日本経済新聞朝刊では,株式報酬の導入企業が1,500社を超え,上場企業の42%を占める見通しであるとしています。その主流とされる譲渡制限付株式による報酬は,金銭報酬債権の現物出資によることから,ストック・オプションと異なり,交付時に総額計上することになるのでしょうか。

経済産業省産業組織課から公表されている「『攻めの経営』を促す役員報酬―企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引―(2019年5月時点版)」(以下「経産省報告書」)や,2019年5月27日公表の日本公認会計士協会 会計制度委員会研究報告第15号「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告」(以下「研究報告」)では,報酬債権の現物出資により譲渡制限付株式を交付した場合,その付与した報酬債権は将来の勤務に係る報酬であるため,現物出資された報酬債権の額を,前払費用等に資産計上するとともに,資本金及び資本準備金として総額計上することとしています。

<解説>

株式報酬の会計処理(1)‐現物出資構成

会社法上,募集...