日本公認会計士協会会計制度委員会研究報告第16号 「偶発事象の会計処理及び開示に関する研究報告」の解説

解説

偶発事象等検討専門委員会 専門委員長/有限責任 あずさ監査法人 公認会計士 高津 知之

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1.はじめに

2019年5月27日に日本公認会計士協会(以下「JICPA」という。)は,会計制度委員会研究報告第16号「偶発事象の会計処理及び開示に関する研究報告」(以下「研究報告」という。)を公表した。この研究報告は,我が国における偶発事象に関する会計上の取扱いと現行実務の分析,それに国際財務報告基準(IFRS)における偶発事象の取扱いを紹介した上で,将来,我が国で偶発事象全般に関する会計基準を開発する場合において,考慮すべき3つの観点(財務諸表の比較可能性,開示の適時性,開示の充実)を示している。

本稿では,この研究報告に示された偶発事象の会計上の取扱いと事例分析の内容を解説する。また,研究報告において検討されている今後の会計基準の開発に際しての課題についても考察する。なお,本文中の意見に関する部分は,筆者の私見であることを申し添える。

2.偶発事象

(1)偶発事象とは

偶発事象とは,「利益又は損失の発生する可能性が不確実な状況が貸借対照表日現在既に存在しており,その不確実性が将来事象の発生...