<INTERVIEW>専務理事・事務局長 新井武広氏に聞く 会計人材の育成,会計リテラシー向上へのこれまでの取組みと今後の展望

解説
会計教育研修機構 専務理事・事務局長 新井武広
会計教育研修機構の設立10周年を迎えて
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1 はじめに

編集部  会計教育研修機構の設立10周年,おめでとうございます。

新井事務局長(以下,「新井」)  ありがとうございます。私どもは,2009年7月に日本公認会計士協会が中心となり,経済界,学界をはじめ様々な関係者の協力を得て設立された教育財団であり,今年7月6日に設立10周年を迎えました。また,7月11日には設立10周年記念行事として「AIの進展と会計リテラシー」というテーマでカンファランスを経団連会館国際会議場で開催して300名を超える方に参加いただきました。誌面をお借りして,これまでの関係者からの有形・無形のご支援に心から感謝申し上げます。

2 設立10周年記念カンファランスについて

編集部  今お話に出ました,設立10周年記念カンファランスは大変盛況でしたが,概要をご紹介いただけますか。

新井  設立10周年記念カンファランスは2部構成で行いました。第1部の基調講演は,人工知能学会の前会長の山田誠二国立情報学研究所教授による「AIの技術的特徴,有効性と限界‐人とAIの協調‐」と斎藤静樹東京大学名誉教授による「会計情報の役割‐会計の本質を理解する‐」でした。そして,第2部では,「AIが進展する中で求められる会計ガバナンス」というテーマでパネル・ディスカッションを行いました。パネリストは,日立製作所財務本部担当本部長の今給黎真一氏,東京大学大学院准教授の首藤昭信氏,日本公認会計士協会のIT担当常務理事で7月22日に会長に就任した手塚正彦氏,JBAホールディングスCEOの脇一郎氏に基調講演の山田先生にも加わっていただき,私がモデレータを務めました。

基調講演の山田先生による,「強いAI」と「弱いAI」,AIの得意分野と不得意分野,騙されやすいAIなどの話を通じて,参加者はAIの現状と今後の展望に関して認識を深めて頂けたものと思います。また,斎藤先生からは,AIの活用にあたっては因果関係,Whyの解明が課題であることなどが指摘され,会計情報と企業価値との関係,会計制度と周辺諸制度との相互補完などの話を通じて,会計の本質に関する理解を深めて頂けたものと思います。第2部のパネル・ディスカッションは非常に活発な議論が行われ,会計ガバナンスでのAIの活用にあたっては,倫理観と常識の重...