ハーフタイム 不毛の懐疑心から 行動する懐疑心へ

解説
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英国の財務報告評議会(FRC)が最近公表した監査報告書によると,監査先に十分異議を示さないなど,懐疑的な姿勢が欠けていた事例が大手7監査法人すべてで確認されたという(7月30日付日本経済新聞)。わが国でも,会計監査人は職業的専門家としての正当な注意を払い,懐疑心を保持して監査を行わなければならないことになっている(監査基準第一一般基準三)。たとえば経営者の主張を批判的に検討し,不正リスクを適切に評価しなければならない。ただし,懐疑心は「不正リスクを評価する」ことだけが目的ではない。

懐疑心とは,猜疑心とは異なり,常に顧客企業が作成した財務報告には不正があることを前提として疑いの目を光らすのではなく,真実を追究し真剣に考えること,しかも何らかの行動を伴わなければならない。監査人は,会計の専門家であっても,ビジネスの細部まで理解が及ばない点も多々あるはず。そのようなところは顧客企業から必要な情報を得て充分理解したうえで,財務報告が正しいかどうか判断すれば良い。そのような事前手順を踏んだうえで,会計処理におかしな点が見つかれば,監査先に異議を伝え,修正すべき点は修正させるのは当...