Q&Aコーナー 気になる論点(248) のれんに対する税効果‐FASBによるコメント募集から(2)‐

解説

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 米国財務会計基準審議会(FASB)が2019年7月9日に公表したコメント募集「識別可能な無形資産及びのれんの事後の会計処理」(以下「コメント募集」)では,現状,会計上ののれんが税務上ののれんを上回る場合に,繰延税金負債の認識を禁止している点を見直すべきか否かについて,フィードバックを得たいとしています。これは,なぜなのでしょうか。

現行の米国基準では,税務上ののれんを上回る会計上ののれんは,将来加算一時差異ですが,例外として,繰延税金負債の認識を禁止しています。このため,永久差異のように,法人税等の負担率と法定実効税率との差異として開示されますが,コメント募集では,仮にのれんを償却することとした場合には,この影響が一般的になるため,関係者からフィードバックを得たいとしています。

<解説>

日本基準‐のれんに対する税効果

わが国では,のれんは,取得原価の配分残余の性格上,税効果を認識しても同額ののれんが変動する結果となるため,あえて税効果を認識する意義は薄いと考えられることから,税効果を認識しません(企業会計基準適用指針第10号「...