時事談論 vol.25「会計のすばらしさ」

解説
( 26頁)

●複式簿記の仕組み

今から40年ほど前の学生時代に初めて会計に出会い,複式簿記の仕組みに大そう感心したのを今でも覚えている。貸借が一致しない,ないしは残高がマイナスになるなど,自らの間違いを気づかされたり,また,難しい取引だと相手勘定が何か考えさせられたり,この点は経理関係に携わる実務家の方々も,皆同じ思いであるように思う。

ただ,実務も長くなると,学生のように純粋に物事を見ることができず,知らぬうちに先入観で決めつけることが多くなり,特に重要性がないと安易に片づけたりするが,実は後で不正等の兆候が潜んでいて後悔することもあったりする。

そして,難しい取引であるとして,皆でどのような会計処理があるべきか検討するときも,よくよく考えてみれば取引自体に合理性がないことが会計処理を困難にしていることに気付かされ,そうであれば,即刻,社長に取引の中止を申し入れるべきといったこともあったりする。最近でいえば,M&Aで他社を多額のプレミアムを支払って買収したにもかかわらず,その後の決算で減損処理をするといったことは,投資家の立場からも理解しがたく,取締役会において当時の審議がどのようなも...