時事談論 vol.27「割引率と見積期間に感じる違和感」

解説
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●見積計算の重要性

金融ビッグバン以降の企業会計において,減損や退職給付会計など,従来に増して見積計算の重要性が高まっている。この見積計算では,特に将来の期間が長くなるほど,将来キャッシュ・フローを見積って,貨幣の時間的価値を測定して現在価値を算定するための「割引率」の意味合いが重要になる。しかし,この割引率であるが,固定資産の減損と,退職給付会計とでは異なる割引率が用いられる。

●異なる割引率

固定資産の減損で使用価値の計算に使用する割引率は,適用指針に5つ例示されている。①当該企業における当該資産・・に固有のリスクを反映した収益率,②当該企業に要求される資本コスト,③当該資産に・・固有のリスクを反映した市場平均・・収益率,④と⑤は省略。これに対し,退職給付会計及び資産除去債務会計で使用される割引率は,原則として無リスクの割引率である。また,退職給付会計での割引率は毎期末に見直す必要があるが,資産除去債務の計算に用いる割引率は見直し不要である。その一方,固定資産の減損に関しては,減損損失を測定する時点での割引率を求めなければならない。

●適用される割引率のレンジ

固定資産の減損...