書評 市川 祐子著『楽天IR戦記‐「株を買ってもらえる会社」のつくり方』

解説

青山学院大学 教授 北川哲雄

(日経BP/本体2,000円+税)
( 26頁)

IR活動の真髄を記述

本書の著者はその題名から想像される通り楽天株式会社(以下「楽天」)という1997年に設立され,約20年で(2018年12月期)売上収益1兆1千億円(連結ベース),時価総額1兆5千億円(2019年9月27日終値ベース)までに急成長した企業の中にあって2005年より10年以上にわたりIR部門で中核的存在(IRオフィサー)として活躍されてきた。その貴重な体験記である。

本書は現役のIR部門で働く人々,さらに将来IR部門で働きたいと思っている人々にとって示唆に富むものになっている。

IRオフィサーの役割とは何かと言われれば,かつて全米IR協会(NIRI)の会長であったマーガレット・E・ヴァイラス氏が年次大会(2004年)で述べた「投資の世界の人々と社内経営者・取締役との知の架け橋」になるという表現が今日でも正鵠を得ているが本書を読み進むうちに,それが具体的にどのようなことを意味するかを読者は体感することになる。

ファンドマネジャー・アナリストとの知的バトル

本書は7章からなる。著者が楽天時代に直面し奮闘し...