<INTERVIEW>「KAMに相当する事項」の自主的な公表について

解説
株式会社三菱ケミカルホールディングス 経営管理室 制度会計グループ グループマネージャー 小森 肇
-会社と監査人との間の緊張感ある関係示す-
( 18頁)

<編集部より>

「監査上の主要な検討事項」(KAM)は2020年3月期から早期適用となる。それに先駆け,2019年3月期の監査について監査人(EY新日本有限責任監査法人)から「KAMに相当する事項」を受領し,自社のWebサイトで自主的に公表したのが三菱ケミカルホールディングス(東一,化学)だ( No.3417・3頁 参照)。本誌は,同社の経営管理室 制度会計グループ グループマネージャー 小森肇氏にインタビューを実施。公表に至った経緯などをきいた。

1.監査計画について

―― 今回,「KAMに相当する事項」を監査人が作成することは,監査計画の段階から盛り込まれていたのでしょうか。

昨年の7月に2019年3月期の監査計画の説明を受けましたが,その時点では既に,日本の監査報告書にもKAMを導入するということは決まっていました。監査人であるEY新日本有限責任監査法人からは,2020年3月期の早期適用に備えて,対応できるように準備しておきましょう,という話はありました。

そのような状況で,監査計画の重点施策として「KAMへの取組み」が上がっていました。具体的には,KAMに関する会社と監査人との協議,そしてKAMの試行ということです。

ただ,その時点では対外的に公表するということまでは想定してはいませんでした。

2.監査対応について

―― 監査人がKAMを作成するのにあたり,会社側として監査対応が変わった面はあったでしょうか。

基本的には,監査を受ける側としては特に変わりはなかった,という認識です。今回の2019年3月期の前,2018年3月期についてもKAMの試行をしたのですが,「終わった期」に関するKAMを作る,というものでしたので少なくともそこでは変わったところはありませんでした。

2019年3月期の「KAMに相当する事項」は4つありましたが,それらは監査人からKAMを提示されたときに,監査や決算の過程で,監査人と会社がお互いに重要だと認識しているものでしたので,特に違和感はなかった,という印象です。

そもそものKAMの趣旨を考えるならば,KAMを作るからといって何か新しい取組みをする,というのは違和感があります。「監査上の主要な検討事項」なので,...