<INTERVIEW>説明責任への意識高めるKAM

解説
株式会社リコー 常勤監査役 栗原 克己
株式会社リコー 常勤監査役 大澤 洋
-「監査実績説明書」への対応に向けて-
( 10頁)

<編集部より>

2020年3月期から早期適用,2021年3月期から原則適用となる「監査上の主要な検討事項」(KAM)。監査役と協議した事項から選定されるなど,KAMにおいて監査役が果たす役割も大きい。そこで本誌は,KAMへの対応状況などについて監査役へのインタビューを実施。

第2回は株式会社リコー常勤監査役の栗原克己氏と大澤洋氏に話をきいた。

1.KAMの受け止め

―― まず,KAMの制度全体については,どのようなお受け止めをされているでしょうか。

大澤洋氏(以下,大澤)  まずグローバルに見ますと,2000年代初頭の金融危機を契機として監査の透明性を向上させる必要性が議論され始め,既に英国,あるいは欧州やアメリカなどの主要国ではKAMが導入されてきています。その意味では,日本での導入はタイミングとしては待ったなしという状況にある,と理解していますし,特に海外を含めた財務諸表利用者の視点からすると,必要不可欠な取組みだと考えています。

ただ一方で,これは監査基準の改訂ですので,我々監査役としても,会計監査における今回の変化によりどのような影響が出てくるのかというところまで含めて検討していかなければなりません。特に対外的なコミュニケーション,中でもステークホルダー,財務諸表利用者に対してのコミュニケーションというところは非常に大きな変化なので,説明責任という観点から重く受け止めており,大変重要な変革だと考えています。

栗原克己氏(以下,栗原)  ステークホルダーから見た時に,会計監査人の監査報告書というのはある意味,通り一遍,ボイラープレートとよく言われます。投資家からすると,これまでは,会計監査人の監査報告書では各社固有のリスクなどはなかなか伝わってきませんでした。そのような観点から考えると,ステークホルダーにより適切な情報を提供するという意味でも,また監査の透明性向上という意味でも,KAMの導入は自然なことだと捉えています。

特に弊社の場合は,監査役会の監査報告書を補足する形で,2018年3月期から「監査実績説明書」というものを招集通知に入れています。KAMの先がけというわけではありませんが,同じような意味合いで監査役としての監査の中身,あるいは監査役としてど...