Q&Aコーナー 気になる論点(249) ストック・オプションのバックデート問題

解説

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

‐2000年代の米国において‐
( 22頁)

 2019年9月8日付の日本経済新聞朝刊の社説において,大手自動車会社の役員報酬問題は,2000年代の米国におけるストック・オプションのバックデート問題と構図が似通うとされていました。このバックデート問題とは,どのようなものであったのでしょうか。

ストック・オプションのバックデートは,より低い株価を行使価格に反映するように,実際に付与された日から遡って,当該ストック・オプションの付与日を設定することをいいます。この結果,会計上は,株式報酬が人為的に高められ,費用が過少に計上されるという問題が生じていました。

<解説>

米国におけるストック・オプションの会計処理

米国では,1972年に公表された会計原則審議会(APB)意見書第25号「従業員に発行される株式の会計処理」において,ストック・オプションの本源的価値によって費用が測定されており,付与日においてイン・ザ・マネー(株価>行使価格の状態)の場合でなければ,費用計上額がゼロとなっていました。

この点を含めた批判に対応するため,1993年に,財務会計基準審...