ハーフタイム 「二項対立」とは何か

解説
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理性か経験か,理念か現実か,のように「二項対立」で物事のシロ・クロを鮮明にしたい人が多い。しかも二つの考え方はあたかも「二項背反」のように考えたい人が多い。近代哲学史を紐解いても,デカルトを始祖とする欧州大陸の理性派と,ロックやヒュームによる英国経験派の論争が有名であり,両派は互いに相手の欠点を挙げて牽制してきた。そのような伝統がいまも活きているのかも知れない。結果として,経験と理性,帰納と演繹を混同することなく,いずれか一方で考えるのが論理的であるように誤解されている。

しかもわが国では,理性とか理念は,欧米先進国の学者や思想家からの借り物であることが多く,そこから演繹的に結論を出しても具体性を欠き不毛な議論に終わることが多い。他方,自分たちの経験にしても限られた状況下で見聞きしたものがほとんどである。しかも不都合な記憶は忘れ,都合の良い記憶のみ思い出す(行動経済学者カーネマン)。

「二項対立」関係にあるとされる二つの概念は,物事を明快にする手段にすぎないのだから,二つの手段のうち使い勝手の良さそうな方をまず使い,次いで他方も使ってより良い結論を導き出せれば良い。それで誰...