会計不正の構造【file19】子会社における架空取引

解説
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・タイプ(不正の種類):架空仕入・売上取引

・業種・業態:映像ソフト販売

・手法・手口:子会社の業務委託先(映像ソフト製造業)が得意先(広告代理店)との取引を主導し,得意先からの発注書・受領書の偽造により,架空の仕入高および売上高計上が行われた。

今回は,会社(甲社)の子会社(乙社)(持分割合50数%)が,業務委託先(丙社)により会計不正に巻き込まれ,多額の営業債権貸倒れの被害を受けた事件を取り上げる。

親会社として,子会社における通例でない営業取引をいかにして識別し,管理すれば良いのかを考える。

1.会計不正の概要

(1)会社の状況

会社(甲社)グループは,クラウドゲーム等のコンテンツ販売や映像ソフト提供等の事業を営み,国内外に10社程度の関係会社を有している。平成に設立し,数年で上場を果たす。以後も,第三者割当増資および会社買収を繰り返し,グループ規模が増大,売上高の連結/単体倍率は,10倍に上る。

過去に,子会社(乙社)と営業取引で接点のあった業務委託先(丙社)は,得意先(広告代理店)向け映像ソフト販売の取引量が増大していたが,広告代理店からの代金支払いサイトが3~4カ月であった...