時事談論 vol.44「会計が市民権を得るために」

解説
( 28頁)

●タイトルが記事の内容と異なる

経営財務を手に取る方は,会計の当事者が多いと思うが,新聞記事を手にして,会計に関する記事の内容とタイトルとが大きく乖離していると感じたことはないだろうか?新聞記者は広範な事象をカバーし,また読者の正しい理解を促すために,非常に高いレベルの知識,経験値が求められると考える。しかし,ジョブローテーションで,政治部,経済部または社会部と異動するため,会計に関する深い知識を要求することは非条理であろう。

●会計のとっつきにくさ

日本の高等教育のカリキュラムにおいて,会計学は履修科目に含まれず,また,実際には会計理論や複式簿記の仕組みの勉強に加え,実践的な慣行も理解しないと役に立たない。記者は当事者の取材に加え,有識者なり専門家のサポートを得るが,基本的な知識を有しないと,適切な質問もできない。例えば,包丁の種類を知っていても,寿司屋で使用する包丁と三徳包丁は大きく異なる。片刃構造の和包丁の特徴を知ったうえで,出刃,柳刃または薄刃包丁の使用方法,コツについて質問しないと真実には近づけない。ところが,十分に理解していないどころか,取材もしていないのに記事に...