[全文公開] JICPA 新型肺炎拡大で「株主総会等に懸念」

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最近の協会・業界の動向等に関する会見開催
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日本公認会計士協会(JICPA,手塚正彦会長)は3月4日,最近の協会・業界の主な動向等に関する記者会見を開催した。チームメンバーローテーションの実施にあたり社会的な影響度の高い会社への長期関与年数を「10年」とする上乗せルールや,最近の不適切会計に関する報道等に関する会長声明等の説明を行った。また,新型肺炎の拡大に伴う懸念事項として,株主総会の開催スケジュール等を指摘。開催時期をずらすことも可能だが,四半期決算と重なることも考えられるため,実務上の困難を伴うとの見解を語った。

IPO監査の担い手育成へ

会見の主な内容は,①2019年12月からの最近のJICPAの活動および業界の主な動向の紹介,②会長通牒「『担当者(チームメンバー)の長期的関与とローテーション』に関する取扱い」,③会長声明「最近の不適切会計に関する報道等について」の3点。

まず①では,業界の動向としてIPO監査の担い手不足問題に関する議論が進められていること等に言及。大手・準大手監査法人以外の担い手を育成するために,JICPAがIPO監査に関心のある中小監査法人のリストを公表するとともに,当該監査法人の会計士などに一定の研修を行うことや,中小監査法人と証券会社等による対話の場を設けて,主幹事を務める証券会社に対して中小監査法人の活用を促していくことなどの案について議論が交わされていること等を説明した。

次に②では,チームメンバーローテーションについて,社会的な影響度が高い(時価5,000億円以上)企業への監査の関与年数を「10年」とする“上乗せルール”を設けたことをあらためて報告( No.3447・4頁 )。

そして③では,ネットワンシステムズ等で判明した大規模な循環取引等( No.3446・5頁 )にも触れつつ,不適切会計が増えているという報道があることについての問題意識を述べるとともに,今一度会員に対し注意喚起を行った旨を説明した。

新型肺炎拡大で株主総会の開催に懸念

また,手塚会長は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,決算作業に遅れが生じることも想定されるため,決算発表の延期に関する議論等を関係各所と連携して進めていく考えも示した。手塚会長は例えば監査法人に感染者が出て監査チームが組成できなくなる場合などの「最悪の事態に備えた議論は必要」と語り,現時点では現場で生じ得る事態について整理をしている段階とした。延期をした場合,株主総会の開催スケジュールが懸念事項である旨を述べるとともに,株主総会をずらした場合には配当基準日の問題や,株主総会と四半期決算が重なることも考えられることから実務上の困難を伴うとの見解を語った。