時事談論 vol.48「監査に関する開示充実の流れと責任論論議のアンバランス」

解説
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●会計監査に関する情報開示の充実化の要請

周知のとおり,2021年3月決算に関する財務諸表の監査から,「監査上の主要な検討事項」(KAM)の開示が義務付けられる。KAMの導入に象徴されるように,近年,監査人に対し,会計監査のプロセス・内容に関する情報の開示を求める流れが強まっている。

●公認会計士の守秘義務

一方で,公認会計士は,公認会計士法,日本公認会計士協会の倫理規則,個別の被監査会社との監査契約等に規定される守秘義務を負う。そのため,公認会計士や監査法人の構成員は,「正当な理由」なく業務上知った情報を他に漏らしてはならない。

会計監査にあたり,監査人が被監査会社から円滑な情報開示を受けるためには,監査人が当該情報を守秘することが大前提である。そのため,守秘義務は,公認会計士監査制度の根幹を支える極めて重要な義務とされる。守秘義務違反には,重い制裁が設けられており,公認会計士法上,2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる(守秘義務違反の刑事罰は,弁護士等他の士業の守秘義務違反に対する刑罰よりも重い)。このほか,守秘義務違反は,金融庁長官や日本公認会計士協会による懲...