<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第8回 のれん(その1)

解説

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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連結決算は空想か

35年ほど前,筆者が初めて連結決算を担当することになった時に上司から「連結決算は空想だ」と言われた。法人格が独立した企業を,あたかも一つの会社のように見立てて,決算をする,だから空想だという事だろう。当時の筆者には大変不思議なことをするもののように思えた。一方で,別の上司から,会社というのはさまざまな活動を行う人間と同じようなものだ,だから法人という,とも教えられた。そうすると,連結決算は複数の人間を合体して,あたかも一人の人間であるかのように身体測定するということになる。身長が170センチの人間を足し合わせると3メートル40センチの巨人になる。足も手も4本になるが,それだと化け物になるので,「連結消去」をしてそれぞれ2本にする,などと下らないことを考えたものだ。

ただ実際に連結財務諸表に表現される企業グループというのは,一定の前提と法則に基づいて計算をして見た架空のものでしかない。なぜならば,前提と法則が変われば,その計算結果も大きく変わるからだ。当然厳密な連結決算手続きを行い,監査も受け,過年度からの推移...