<Interview>中村直人弁護士に聞く 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた株主総会について

解説

 弁護士 中村直人

( 12頁)

新型コロナウイルス感染症の影響を教えて下さい。

2月下旬辺りから新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」といいます。)の感染拡大のリスクが認識されるようになりました。3月総会から,平成22年の新型インフルエンザ時の対応を踏まえ,招集通知やホームページに,マスク着用の要請や,感染によるリスクの高い高齢者等への入場自粛等を求める記載をする事例が多くなりました。欧米での感染拡大,外出禁止などを踏まえ,株主総会の出席を控えるよう積極的に呼びかけるような会社も多くなりました。その結果,株主数は平均して昨年の3割程度に減少しています。時間も2割程度短くなっています。4月総会は,新型コロナの感染拡大が続き,外出自粛要請が強く出されていたこともあり,お土産や懇親会の開催を中止する会社も増加しました。4月に緊急事態宣言が発出され,東京都などで緊急事態措置が講じられた結果,予定していた会場が使用できなくなり,急遽,会場を自社会議室に変更し,それに伴い開会時間を変更する会社も続出しました。今後1~2か月で,新型コロナが終息することは考えにくいと思いますので,6月総会においても,新型コロナの感染拡大のリスクを踏まえた対応が必要不可欠となります。

どのような点に気を付けて総会の運営をすればよいのでしょうか。

役職員と株主の安全確保を優先した総会運営を行うことが重要です。時間を短時間にし,密閉,密集,密接のいわゆる3密を避ける配慮も必要です。まず,会場運営では,受付のマスク配布や消毒液の配置,マスク着用での来場のお願い,スタッフのマスク着用の旨の表示,高熱者や風邪の症状がある来場者の入場自粛要請等の表示,株主席の配置,役員のマスク着用,株主席との距離,役員の出席方法(一部役員の別室でのテレビ会議システムによる出席),会場マイクの消毒,資料のホームページ上での事前開示,お土産の廃止,懇親会の廃止,受付の省略等などを検討します。次に,議事シナリオも,報告事項や議案の内容の説明の簡素化,株主への時短の呼びかけ,終了目標時間の明示,特殊対応をしていることの説明,退場命令の判断基準・手続(マスクをしない者,咳をする者,受付で熱が確認された者等),他の株主のクレームへの対応などの見直しや調整が必要です。さらに,来場者数の縮減努力として,来場差し控えや議決権行使書等の活用の呼び...