Q&Aコーナー 気になる論点(264) IASBにおけるのれんの議論(3)

解説

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

‐企業結合における無形資産‐
( 38頁)

 国際会計基準審議会(IASB)が2020年3月に公表したディスカッション・ペーパー(DP)「企業結合―開示,のれん及び減損」(のれんDP)では,企業結合時における無形資産の識別について取り上げています。コストベネフィットの観点から,また客観性の観点から,無形資産の識別を見直すことを提案しているのでしょうか。

いいえ,IASBの予備的見解は,企業結合で取得された識別可能な無形資産の認識規準を変更する提案はしないというものです。

<解説>

企業結合における無形資産(1)‐問題の所在

のれんDPでは,IFRS第3号「企業結合」の適用後レビュー(PIR)において,企業結合で取得されたすべての識別可能な無形資産を,のれんとは別に認識するかどうかにつき多くのコメントがあり,それは,コストと便益の両方に関連しているとしています(5.1項)。

IAS第38号「無形資産」では,定義と認識規準を満たした場合に,無形資産として認識することとしています([図表1])。

[図表1]無形資産の認識

要件IAS第38号の概要定義無形資産...