近時の決算訂正の傾向

解説

日本取引所自主規制法人 上場管理部 総務グループ 調査役 青山 梨公子

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会社や事業部門の業績目標達成のため,又は個人の営業ノルマ達成のために行われる粉飾決算や,個人が会社の資産に手をつける着服・横領は,従来から継続的に発生している。ここ最近も,複数の上場会社や上場会社の子会社が関与する架空循環取引が発覚し,報道でも大きく取り上げられた。

日本取引所自主規制法人(以下,「当法人」という。)では,株式会社東京証券取引所(以下,「東証」という。)の委託を受け,東証上場会社の適時開示に関する審査を日々行っている 。本稿では,その蓄積された審査データをもとに近時の傾向を分析し,具体的な事例とともに,決算訂正に至る不正や誤謬等を未然に防ぐポイントを紹介したい。なお,本稿において意見にわたる部分は筆者の個人的見解であり,当法人の見解ではないことを予めお断りする。

1.はじめに

会社情報の適時適切な開示が,市場における公正な価格形成に必要不可欠であることは言うまでもない。その中でも,とりわけ決算情報は,投資者の投資判断の基礎となる最も重要な会社情報である。投資者に会社情報を提供する制度としては...