書評 八田進二著『「第三者委員会」の欺瞞‐報告書が示す不祥事の呆れた後始末』

解説

 元金融庁長官 佐藤 隆文

(中央公論新社/本体860円+税)
( 35頁)

不祥事対応の品格を問う警世の書

本書は,長年にわたり会計監査を理論・実践の両面にわたり探究なさってきた著者が,不祥事の際に設けられる「第三者調査委員会」について,その実態を観察し,病理を解明し,その改善の方向を提示するものである。

企業や団体で不祥事が起きた場合,当事者には,説明責任を果たしつつ,失墜した信頼を修復し,棄損した企業価値を回復させることが求められる。実態を正確に把握し,真の原因を究明し,実効性ある再発防止策を策定することが基本動作となる。本来は,当事者が自浄作用を発揮して,自ら速やかに対処することが望ましい。しかし,内部統制の有効性や執行幹部の信頼性が失われている場合,あるいは錯綜した事案で深刻な社会的影響が生じている場合には,実態解明の任務は信頼できる第三者に委ねるのが相応しい。ここで登場するのが「第三者委員会」である。

第三者委員会の使命は何か。それは究極的に,「公共の利益」のために調査・分析・提言することである。作業のねらいは,当該企業・団体のガバナンスを改善し,信頼を回復させることであるが,その成...