不正事例に学ぶ子会社のリスク管理のポイント 第4回 不正のトライアングル

有限責任 あずさ監査法人 リスクマネジメント部 パートナー 細井 友美子

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1.不正はなぜ起きてしまうのか?

なぜ不正は起きてしまうのでしょうか?そのメカニズムが分かれば,不正を防止し発見する仕組みに近づくことができるはずです。

不正の発生につながるメカニズムを分析する際には,不正のトライアングルという考え方を用います。不正のトライアングルとは,米国の組織犯罪研究者であるドナルド・クレッシー氏により提唱された理論で,不正は「動機・プレッシャー」「機会」「姿勢・正当化」の3つの要因が揃ったときに発生する,というものです。

不正が発覚すると,その不正は特別な状況下で生じたものであるとか不正実行者は特別な存在であるという見方をされることがありますが,不正のトライアングルにより,何のためにどのようにして不正が行われたかを分析すると,多くの共通点が見えてきます。

2.不正リスク要因

監査の基準では,不正が行われる可能性に常に留意し,不正リスク要因を考えながら監査を遂行することが求められます。監査上,「不正」とは2種類の会計不正,すなわち不正な財務報告(粉飾)と私的流用(横領)を指し,贈賄や品質不正等については「違法行為」として検討を行います。

そして,①不正を実行する「動機・プレッ...