<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第17回 貨幣と会計(その2)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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原始時代のお金

日比谷公園を歩くと,突然,はじめ人間ゴンが使っていた原始時代のお金のようなものに出会う。原始人が大きな石のお金の穴に丸太を差し込んで,えっほえっほと運んでいる漫画を見たことがあるが,実際にそういうものがあったのだと思い,よく見ると,これはヤップ島という島で近年まで流通していた貨幣であったそうだ。支払いの都度,こんな大きな石を持ち運びしていたのかと思うと,電子マネーでピッと一瞬で支払いが出来る現代は素晴らしいと感じる。しかし,石の貨幣(石貨)のことをよく調べてみると,支払いの都度持ち運びすることはなかったようだ。石貨は価値の象徴として目立つ場所におかれ,誰がそれを所有しているかという「共通の理解」が存在していただけだった。したがって,支払いは石貨を動かすことなく,「共通の理解」の変更なので一瞬で終わる。現在の電子マネーと同じくらい,手間も時間もかからないスピーディな決済であったらしい。

ただ,問題は「共通の理解」をどうやって担保するかである。ヤップ島でどのように決済の記録をしていたかはあまり分かっていないらしく,石に直接刻んでいたという説もあれば,別途記録簿的なものを作ってい...