不正事例に学ぶ子会社のリスク管理のポイント 第5回 不正の手口

有限責任 あずさ監査法人 リスクマネジメント部 パートナー 細井 友美子

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1.不正はどのように行われるのか?

不正はどのような手口で行われるのでしょうか?不正のトライアングルによれば,不正を働く動機,機会,正当化の状況が揃った時に,人は粉飾や横領を実行しようと考えてしまいます。そして,自身がとり得る様々な手段を使い,書類やデータの改竄・偽装,部下や取引先との共謀等,不正行為のスキームを作り上げていくものと考えられます。

監査の基準では,不正リスクを識別する情報を入手するため,公表されている主な不正事例,不正に利用される可能性のある一般的及び産業特有の取引慣行を理解しなければならないとされています。

企業の事業や業務の内容を踏まえ,誰がどのような方法で不正を働いたのか?という不正の手口を分析すると,不正を防止・発見するためのヒントが見えてきます。

2.主な不正の手口

企業が公表している不正の調査報告書を当法人で分析したところ,粉飾の手口として,売上の過大計上,原価の過少計上が多くなっています。トップラインである売上,本業ビジネスの成果である営業利益をよく見せたいという動機が背景にあると考えられます。

売上の過大計上の主な手口には,翌期以降の売上を先行計上する,循環取引を使...