カウントダウンKAM適用 第3回 企業開示とKAM

日本公認会計士協会 監査基準委員会副委員長 山中 彰子

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第3回は,企業開示とKAMの関係を取り扱います。KAMの早期適用の事例をみると,多くのケースが会計上の見積り項目に関連した内容となっています。会計上の見積り項目は将来に関する事項で不確実性を内包し,また経営者の判断を伴うことから,監査上慎重な検討が必要となる領域であるため,重要性がある場合にはKAMとして選定されることが多くなります。本コラムでは,企業開示のうち有価証券報告書における会計上の見積りに関する記載とKAMとの関係について解説していきます。

なお,文中意見にわたる部分は筆者個人の見解であり所属する組織の見解ではありません。

1.有価証券報告書における会計上の見積りに関する記載とKAMとの関係について

監査人は,個々の企業の状況を踏まえ,何に重点をおいて監査を実施したのか,どのような領域で監査人の重要な判断が行われたのかについて,利用者の理解が深まるようにKAMを記述することが期待されています。そのためには,例えば,会計上の見積り項目をKAMとする場合には,単に「見積りが複雑である」,「経営者の主観的判断に大きな影響を受ける」等の記述では不十分で,経営者が適用している見積りの手法が複...