英文開示実務担当者のためのIR翻訳入門講座 第7回(最終回) 戦略的英文開示のすすめ
かえで翻訳株式会社 寺﨑 徹哉
かえで翻訳株式会社 岡村 憲一郎
本講座もいよいよ最終回となるが,第1回( No.3461・36頁 )で予告した通り,本稿では日本企業が目指すべき英文開示のあり方を,「戦略的」および「費用対効果」をキーワードとして考えてみたい。またIR翻訳の現場に身を置く者として,理想と現実のギャップを認識しつつもできる限り実現可能な提言をさせていただきたい。まずは日本企業による英文開示の現状を紹介した後,戦略的英文開示とは何か,そしてこれを具体的にどう進めていくべきかについて述べていく。
日本企業の英文開示実施状況
東京証券取引所は今年に入って「英文開示実施状況」を公表し始めた。同取引所のウェブサイトによれば,「海外投資家の利便性の向上及び英語による会社情報の開示・提供の一層の促進を図る」ことがその趣旨である。なおこれは,各上場会社が任意で行った回答に基づくアンケート調査であり,データとして完全なものではない。とはいえ,上場企業の英文開示の現状を知るうえで大変貴重な資料である。
筆者はこの資料の本年8月末現在の最新版をもとに,上場企業の英文開示の実態を数値化してみた。それが左下のグラフである。
英文開示企業1,308社の書類別開示状況
調査対象と...
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