実践的仕訳テストの実務と留意点

監査法人アヴァンティア 公認会計士 加藤 建史

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1 初めに

仕訳テストとは,公認会計士が,財務諸表監査の一環として実施している手続であり,経営者が内部統制を無効化して起票した「異常な仕訳」がないかを確認するために,一定の期間に企業が起票した全仕訳を対象に実施するテストである。この仕訳テストについての記述がなされている監査基準委員会報告書240「財務諸表監査における不正」が公表されたのは平成23年である。それを契機に会計士は仕訳テストを実施するようになった。

ほとんどの監査チームは,「経営者による内部統制の無効化」を特別な検討を必要とするリスクとして識別し,それに対応する手続として,仕訳テストを実施している。仕訳テストとは,現代の監査において,いわば必須の,大変に重要な手続である。

また,この手続は企業内で経理業務を担当されている方が,自社の経理処理に誤りがないか,概括的にチェックしたりするのにも大変に有用であるし,内部監査人が,内部監査の一環として,自社が起票した仕訳を監査する際にも有効である。

公認会計士のみならず,経理部門の方や内部監査人の方にも大いに参考になるものと考える。

本稿では,仕訳テストを有効な不正発見のツールとして活用するため...