企業内容開示制度の実効性確保に向けて 第8回(最終回) コロナ禍で再認識される諸課題と今後の取組み

有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 市川 育義

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はじめに

第1回から第6回までは,我が国の企業内容開示制度の実効性確保に向けた課題や取り組みについて,特に非財務情報充実の観点から解説を行い,第7回「総括」においては,現行の企業内容開示制度における運用面での強化策について,制度化から10年以上経過する内部統制報告制度(J-SOX)も含め,全体的な取りまとめを行った。

そして,最終回となる本号においては,前例主義にとらわれることなく,我が国の企業内容開示制度の実効性確保に向けて,今後の制度改正も視野に入れた検討を行うこととする。

これは,本企画を進めている途中段階において,新型コロナウイルス(COVID-19)が各国で猛威を振るうようになり,日本においては特に3月期上場会社の期末決算業務や期末監査業務を直撃したことで,従前より問題提起されてきた我が国の企業内容開示制度の諸課題について,改めてその重要性を認識するに至ったことによるものである。

今回の新型コロナウイルス(COVID-19)は,今後の産業構造や企業経営(ビジネスモデル,サプライチェーン,リスクマネジメント,テレワークの推進など)に極めて重要な影響を与えるものと考えられ,もはや元の社会...