<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第23回 金融緩和と財政拡大の影響(その2)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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箍(たが)がはずれた樽

日常よく使っている言葉でも,その言葉の漢字や本当の意味を知らない言葉はたくさんある。「たががはずれた」という言葉もその一つであろう。「たが」は漢字で箍と書き,木桶や木樽の周りを縛る紐のことで,今は薄い金属ベルト製のものがほとんどである。木桶や木樽の箍がはずれたところを物理的に想像してみると,かなり悲惨な状況だと思う。今の金融・財政がまさにそうである。

リーマンショックの後,アメリカの量的緩和政策への対応が遅れた日本は極端な円高に襲われ,製造業を中心に甚大な影響を受けた。政権が変わってから,それを取り返すべく異次元の金融緩和に踏み切り,異常な円高は解消された。日本の製造業も少しは息を吹き返した。超円高だった時代と比較して割安感の出た日本に対して世界から注目が集まり,オリンピックを控えてインバウンド需要が拡大していった。そして経済の回復基調のタイミングを見計らって消費税を増税し,少しずつではあるが着実に財政健全化にとりくんでいたところへコロナがやって来た。

コロナ禍は全世界規模の緊急事態であり,感染爆発を阻止するために各国はあらゆる手段を講じなければならなくなった。特に感...