時事談論 vol86「記述情報の利用と提供」
( 58頁)
●記述情報と比較可能性
記述情報の充実が顕著である。
金融庁は,好事例を公表し,記述情報の開示を奨励している。いわゆるESG情報も,数値化できるものには限りがあることから,多くの情報が記述情報にならざるを得ない。
会計上の見積りも同じだ。財務数値として公表されているものは,いくつもの仮定の積み重ねの上で算出されたものだから,経営者の考え方や仮定の前提となる将来予測の説明が不可欠になる。そうした説明の多くは記述情報だ。
記述情報は,比較可能性が高いとは言えない。文字で説明したものを単純に比較するのは難しく,記述内容のニュアンスの違いも比較には適していない。記述情報の拡充は比較可能性を損なうとさえ言える。
こうした問題は,IFRSの適用に際しても同じような議論があった。IFRSでは,財務諸表注記において,どうしてその処理が行われたのかの経営者による詳細な説明が求められるため,必然的に記述情報が多くなる。IFRSの任意適用が開始された当初,IFRS適用企業と日本基準適用企業の有価証券報告書の頁数に大きな差があると言われたものである。
IFRSでは,多くの場合,原則とされる処理方法が特定されており,代替的...
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