<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第25回 金融緩和と財政拡大の影響(その4)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

( 52頁)

税金と貨幣

MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)は,「国はいくらでも借金できる」という暴論だとも言われているが,その考え方の中核は税金と貨幣の関係性にある。MMTでは,その貨幣が納税の際に使えるかどうかが,それが流通するかどうかを決める際に重要になるという。この考え方をタックス・ドリブン・マネタリー・ビュー(Tax driven monetary view)というが,国民が税金を納める際に,それを国家が受け取ることを保証することで,ただの紙切れが貨幣という価値のあるものに変身するという理屈だ。

国民に納税義務があり,その支払いをその国の通貨で行わなければならないということに,国家と国民が合意すれば,その通貨は金や,銀といった価値のあるものでなくてもかまわない。タックス・ドリブン・マネタリー・ビューによれば,不換紙幣が成立するのは納税手段として使用可能だからであり,その前提としては,国民に税債務があり,国家に徴税権という資産があるということがポイントとなる。そしてさらにその大前提になるのは,国家が支出を先行させる(スペンディング・ファースト)という考え方である...