役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<204> 任期短縮に伴う退任取締役を不再任とする正当な理由

 弁護士 小林 公明

( 25頁)

非公開会社において,取締役の任期を短縮する定款変更に伴い退任する取締役をその後の株主総会で取締役として再任しなかった場合,会社は損害賠償責任を負うか。

1 結論

会社は不再任の正当な理由が存在しない場合には一定の範囲で責任を負う。

2 任期短縮の動きとそれに伴う紛争

質問にある「非公開会社」とは,実務上の用語であって,会社法上の用語である「公開会社」(2⑤)以外の株式会社,すなわちその発行する「全部の株式」について譲渡制限,すなわち,株式の内容として譲渡による取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めをしている株式会社をいう。

「全部の株式」とは,一部の株式だけに譲渡制限をかけることにより,公開会社に対する厳しい規制を免れることを許さない趣旨である。

つまり,全株式譲渡制限会社のことである。

公開会社は,取締役会必置(327Ⅰ①),監査役の権限は会計監査のみならず業務監査に及び(389Ⅰ),取締役任期2年(332Ⅰ)・監査役任期4年(336Ⅰ)等と,非公開会社のそれらに比して規制が厳しい。

以上のように,公開か非公開かは譲渡制限による区別であって,株式を上場しているか否かによる上場会社,非上...