<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第32回 マテリアリティ(その1)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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「重要な」から「重要性がある」へ

2021年2月12日,ASBJはひとつのニュースを掲示した。そのタイトルは「IASBが,会計方針の開示を改善し,会計方針と会計上の見積りとの区別を明確化するためにIFRS基準を修正」というものだった。中身を見てみると,「修正は,重要な(significant)会計方針ではなく,重要性がある(material)会計方針を開示することを企業に要求している。」とある。どうやら,「重要な」という言葉が「重要性のある」という言葉に置き換わるらしい。で,それが?と思った人は多いのではないか。

よく見ると,「重要な」という言葉の横に,わざわざ括弧書きで(significant)と書いてあり,「重要性がある」という言葉の横にも,(material)と書いてある。要すれば,IFRS(IAS第1号「財務諸表の表示」)に修正があって,significantという言葉が,materialに置き換わったのだ。それで日本語もそれに合わせて,従来の「重要な」という言葉を「重要性がある」という言葉に置き換えたのだ。さぞ,苦労したことだろう。

では,Significantという言葉と,Mat...