ハーフタイム 伝統的な経済学と会計学は,なぜ環境と社会を無視してきたのか

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古典派経済学から現代経済学に至るまで,それと仲の良い双子の関係にある会計学も,環境と社会を利害関係者とみることはなかった。ところが,CSR,ESG,SDGsの重要性が広く認識されるに伴い,2019年8月の米国経営者会議は「企業の目的は,株主利益だけではなく,すべての利害関係者の利益を追求することだ」と宣言。2020年1月のダボス会議「世界経済フォーラム」は,資本主義を「ステークホルダー資本主義(Stakeholder Capitalism)」と再定義した。そのステークホルダーには,下図が示すように,「環境」と「社会」が含まれる。地球という自然環境は人類のプラットフォームであり,あらゆる資源の宝庫であるが,経済人は環境負荷をコスト認識することなく,自然の恵みを当然の権利であるかのように享受してきた。この「外部性」が環境破壊の一大原因となったことをいまようやく認め始めたのである。だが,19世紀の英国には先覚者がいた。たとえば,T・R・マルサスやE・F・シューマッハーは,環境の経済価値の重要性を訴えた経済学者だった。二人の説によると,空気や水の使用価値は高いが,市場で取引するための交換価値が...