バーチャル株主総会(3) <INTERVIEW>多様化する株主総会への期待と課題

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日本格付研究所 審議役 水口 啓子

――ハイブリッド型バーチャル株主総会(参加型・出席型)の導入状況について感想をお聞かせください。

会社の規模や事業の特性,株主の特性(地理的な分散状況を含む),会社の通信インフラ整備の状況などの観点からも,会社間でバーチャル株主総会の捉え方は異なり得ると思いますが,ハイブリット型に着手する会社が増えてきていますね。約13%( 本号10頁 ・図表1のハイブリッド参加型とハイブリッド出席型の合計)という割合が多いのか少ないのかという判断はできませんが,株主・投資家にとって,株主総会は会社との対話の大事な機会です。昨今のバーチャル株主総会に関する取組みで,遠方に居住していてリアル総会の参加が難しいが,オンラインで株主総会に参加または出席したい株主などにも株主総会の参加や傍聴の機会が広がり,株主総会の透明性を向上できるのに加えて,株主との対話推進やDX活用の良い機会である観点からも有益だと思います。

出席型の場合には,物理的な会場に出席できなくても,株主総会での対話も踏まえて,議決権行使をできることなどに価値を見出せます。参加型であっても,対話が直接できなくとも株主総会が提供する情報を得られる点なども評価できます。

――現在,バーチャルオンリー型株主総会の開催を可能にする法案が国会で審議されています。バーチャルオンリー型を開催するにあたって,どのような課題が考えられますか。

バーチャル株主総会を円滑化するためには,まずはシステムの安定性の確保は避けて通れない課題の一つだと思います。大事な物事を決めるという時にシステム障害が起こる可能性もあります。システムインフラの強化など手段を講じたとしても,想定外のトラブルは生じ得ます。会社側には,さらに色々な観点から検討していく中で,株主の円滑な参加に向けたバックアップ体制の構築をはじめとしたバーチャル株主総会に関する環境整備を図っていただきたいと思います。

株主の立場からは,リアル株主総会と比べて,質問や動議の提出に対する心理的ハードルが下がり,容易に複数回の質問や動議を送信するケースも想定されます。こうした状況で,会社がすべての質問や動議を受け付けますということでは建設的な対話に繋がらない可能性も考えられます。その一方で,株主が,自分の質問などが取り上げられない理由は議事進行の恣意的な考えによるものだろうかといっ...