コーポレート・ガバナンスの強化と指名委員会等設置会社における仕組みの実効性

甲南大学 経営学部 教授 内藤 文雄

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Ⅰ.はじめに

指名委員会等設置会社の取締役会は,ガバナンスが強化された機関設計との意義が共有されているなか,当該機関設計の会社形態が上場会社では78社 にとどまり,拡がりを見せていないことに対する理由として指摘されている事項の実態を明確にするとともに,ガバナンスの実効性を高めるために必要と考えられることは何かを提示することに本稿の目的がある。

日本公認会計士協会は,指名委員会等設置会社の意義を次のように説明している。

指名委員会等設置会社:  会社法2条 12号に定義された,株式会社の内部組織形態で,それぞれ3人以上の取締役で構成する「指名委員会」,「監査委員会」,「報酬委員会」の3つの委員会が設置される。委員の過半数が社外取締役であることが定められており,株主保護の見地に立った厳正な監督を行うことが期待される。取締役会の中に社外取締役が過半数を占める「各委員会」を設置し,取締役会が経営を監督する一方,業務執行については執行役にゆだね,経営の合理化と適正化を目指した制度。指名委員会等設置会社では常に会計監査人の設置が必要となっている( 会社法327条 5項)。

かかる説明で「厳正な監督を行うこと」に...