Q&Aコーナー 気になる論点(298) 持分法会計(2)

‐持分変動差額に関する連結との相違‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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企業会計基準委員会(ASBJ)が2021年9月3日に公表したショート・ペーパー・シリーズ(SPS)第3号「持分法会計についての視点」では,IAS第28号「関連会社及びジョイントベンチャー(JV)に対する投資」における要求事項は,一行連結と測定基礎のハイブリッドであるとしたうえで,適用が考えられる4つの原則を提案しています。その中で,原則3(持分法における所有持分に関する会計処理)を提案しているのは,なぜでしょうか。

SPS第3号の原則3では,重要な影響力も共同支配も,投資先に対する支配を構成しないため,連結に関する会計処理の要求事項のうち,グループの概念に基づく投資者の所有持分に関する会計処理は,持分法に関する会計処理の要求事項に引き継ぐべきではないとし,この含意として,持分変動差額の取扱いを挙げています。

<解説>

SPS第3号(1)‐ハイブリッドとしての持分法と4つの原則

SPS第3号は,持分法が過去から継続する解決すべき課題であるにもかかわらず,国際会計基準審議会(IASB)が正面から取り上げていない論点であり,2021年10月開催の会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)会議...