<INTERVIEW>監査のさらなる信頼性向上へ「経済環境踏まえた対応を」
本年9月から金融庁の「会計監査の在り方に関する懇談会」(以下,「在り方懇談会」)が開かれ,監査事務所の監査品質向上,公認会計士個人の能力発揮について議論が進められてきた。本誌はこのほど,在り方懇談会の座長を務める八田進二・大原大学院大学教授にインタビューを実施した。上場会社監査の担い手として求められるものは何か。また,監査事務所に対するチェックや会計士のレベルアップに向けて考えられる方策など,八田教授ご自身の考えも交えて聞いた。 |
1.「転ばぬ先の杖」として
――在り方懇談会の再開に至った経緯を教えてください。
本年8月に金融庁が公表した2021事務年度金融行政方針で,「会計監査の在り方に関する懇談会」において,会計監査を巡る諸課題について総合的に検討することが示されました。前回(2015年)の立ち上げ時は,東芝の会計不正問題が契機となり,日本の会計監査を根底から見直さなければならない状況でした。今回は主に監査品質をどう高めるか,いわばわが国の監査のさらなる信頼性向上に向けての「転ばぬ先の杖」として,必要な手当てを行うことが課題になっているものと思っています。
私自身,監査法人間のリソースに差が大きいと感じており,それが結果的に監査の品質に大きな影響を及ぼすのではないかと考えています。そのために必要なことは,第一に,現在の監査法人の実態や監査対応について確認し,望ましい方向に見直すこと。もう一つは,時宜に適った資質や能力を備えた会計士を輩出するために望ましい試験と研修制度の見直しです。試験制度については長期的な課題でしょうが,国際的にも監査品質の向上が求められる中,どのように対応するかが求められていると思います。
――前回の懇談会から6年が経ち,多数のステークホルダーがいる上場会社を監査する場合,法的な裏付けが必要ではないかとの意見が出ています。議論の背景は何でしょうか。
前回以降,東芝問題に匹敵するような不適切会計事案は起きていません。監査法人の強制ローテーションの議論①も沈静化し,現在は任意レベルで監査法人の交代が増加している状況です。企業サイドとしては監査報酬の額を交代理由とするケースが多いですが,監査サイド,特に大手監査法人はリスクの高いクライアントはできるだけ避けた...
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