<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第46回 持ち合い株(その3)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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ストライクかボールか

野球に興味のない方でも今年は,大谷翔平選手の大リーグでの活躍のニュースにウキウキされたのではなかろうか。さらにオリンピックで侍ジャパンが金メダルを獲得するなど,野球の話題が豊富な年だった。野球ではストライクかボールかの判定がゲームの行方を大きく左右することがある。ボールがピッチャーからキャッチャーに渡るまでに,ホームベースの上を通ったか,その外を通ったのかでその意味は大きく異なる。いずれにせよボールはキャッチャーのミットには収まっているのだから,どっちでもいいではないかという訳にはいかない。

これと似たような話が会計にもある。株については公正価値で評価し,前年度末の公正価値と今年度末の公正価値に違いが出た場合に,その差額の扱いをどうするかという問題である。差額がP/Lの中を通るのか,P/Lの外を通るのか。大きな違いである。いずれにせよ公正価値で評価しているのだから,どっちでもいいではないかという訳にはいかない。

リーマン・ショックの後の金融商品会計の改善のテーマは,複雑な会計基準を簡素化しようというものだったので,株についてはその保有目的に関わらず,前年度末の公正価値と...