<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第47回 持ち合い株(その4)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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権利落ち

株式投資のイロハとして最初に覚える用語の1つに権利落ちという言葉がある。配当の権利確定日を過ぎてから株主名簿に登録された株主はその期は配当を受け取ることができないので,配当に相当する金額分だけ株価が安くなることを,権利落ちという。株主の側から見れば,配当金を受け取ることができる株主と,1日違いで配当金を受け取れない株主との差が,株価に反映されることを意味する。発行企業の側から見れば,株の公正価値は発行企業の解散価値を想定して形成されるので,配当支払いがなされる前と後とでは,発行企業の解散価値に差があり,それが株価に反映されることを意味する。

持ち合い株からの配当金

2009年に公表された金融商品会計改正の公開草案(後のIFRS第9号)で,株についてはその保有目的に関わらず,すべてFVTPL(毎期末の公正価値で評価し,前期末の公正価値との差額は損益で認識)を適用することが提案された。しかし同時に,日本の持ち合い株という経済的慣行に対する配慮として,任意で選択した株について,FVTPLを適用せずに,OCI(その他の包括利益)で認識するOCIオプションも併せて提案された。

ここで問題になっ...